【生活指導について】

生活指導は夜尿症治療の土台となるもので、最も重要な治療法と位置付けられます。
 生活指導のない治療は決してうまくいかないし、例え最初はうまくいっても、必ず途中で破綻します。保護者だけではなく夜尿症小児本人にも十分な時間を掛けてわかり易く説明しましょう。以下に重要な指導要項を5つ列挙します。

 

(1) 規則正しい生活
(2) 水分制限
(3) 塩分・牛乳の制限
(4) 起こさない・叱らない・焦らない
(5) (寒冷時期)寒さ対策
(6) おむつはしない

 

 

 

1. 規則正しい生活について

 

 人間の身体には年齢に応じて、それぞれ最適の生活パターンがインプットされています。この生活パターン通りに生活すると、自律神経による安定した膀胱・尿道の機能調節とホルモンによる安定した尿量調節が受けられます。反対に相反する生活をおくると安定した調節が受けられません。当然夜尿症は増悪することになります。安定した生活とは何か?端的に言うと『早寝早起き』のことで、さらに夕食終了後から就寝まで最低2時間30分、出来れば3時間あけることが大事です。また睡眠も十分とることが必要です。

 

2.水分制限について

 

 基本的にどのタイプであっても夕食後の水分制限を行う必要があります。これは【水はどれくらいの時間で尿に変化するのか】のところで解説しましたが、水を飲んでから2時間30分から3時間で、飲んだものの70~80%が尿となって排泄されます。これは丁度夕食開始から就寝までの時間に相当するので、就寝前に排尿すれば、夕食前に飲んだ水の影響はほとんど無視できます。問題は夕食開始から就寝までに飲んだ水の影響です。私のクリニックで指導している内容を下記に書いておくので参考にして下さい。

 

夕食時の水分摂取量は原則コップ軽く1杯です
 コップの大きさは年齢によってことなります
5~6歳 :150mlのコップに軽く1杯=120ml
 7~8歳 :180mlのコップに軽く1杯=150ml
 9歳以降:200mlのコップに軽く1杯=170ml

 

夕食終了時から就寝までの水分摂取を禁じる

 

夕食後は2時間30分から3時間の間隔をあけ、必ず排尿してから就寝させる

 


 どんなにすばらしい薬を使っても、水分制限が不十分ならば効果は期待できません。勿論過度な水分制限は子供の心身に与える影響を考えると問題がありますが、この場合の制限は限られた時間内であり、しかも適量の水分は摂取しているのですから、問題ないものと考えられますし、経験的にも問題が生じたことは一度もありません。

 

 

 

3.水分制限前後の夜尿頻度の変化について

 

 水分制限によって夜尿頻度がどれくらい減少するのか、実際の患者さんで調べてみました。結果ですが、水分制限を行う前の平均夜尿頻度は86.2%だったのが、水分制限後は平均53.5%に減少しました。具体的に言うと、夜尿日数が水分制限だけで半分以下になった夜尿症小児は115人中44人もいたのです。さらにほとんど消失した小児は115人中5人もいました。

 

 

4.塩分制限と牛乳制限

 

 塩分を取り過ぎると誰でものどが乾きますが、これは血中の塩の濃度が上昇すると渇中枢が刺激されるためです。当然水分摂取量が増加して尿量が増えます。また塩分の過剰摂取をすると塩の中に含まれているナトリウムも大量に体内に入ります。必要な電解質なので一部は体に吸収されますが、大部分は尿中に排泄されます。ナトリウムは水と親和性があるため、ナトリウムは単独では排泄されず、体内の水を引っ張って出て行きます。水分摂取量は多くないのに、多尿の原因になるのです。
  牛乳を水代わりに飲んでいる子どもは大勢いますが、必要以上に牛乳を摂取すると含まれる脂肪の蓄積により肥満の原因となるし、塩分と同様に渇中枢が刺激され、やはりのどが乾くのです。
  以上の理由から私のところでは、夕方以降の塩分の摂取を可能な限り控えさせ、夕方以降の牛乳の摂取を禁止しています。塩分制限は具体的には夕食の味付けを薄味にさせ、夕食のお味噌汁・お吸い物・スープは原則上やめさせています。またスナック菓子は禁止にしてます。

 

5.夜起こさない

 

 夜中に子供を起こしてトイレに連れていくケースが非常に多いのですが、これは以下の理由から絶対にやめなければなりません。例えば,毎晩夜中の1時に起こしてトイレに連れて行く習慣があったとすると、この時間帯に夜尿が固定化される可能性があります。言い換えると、起こすのを止めた場合、今度は1時に無意識に寝具の中で排尿するようになる可能性があります。また夜間中途覚醒によって睡眠リズムを狂わすことになりますが、抗利尿ホルモンの分泌リズムは睡眠のリズムによって刺激されると言われています。夜中に起こすと睡眠リズムを壊すことになり、結局抗利尿ホルモンの分泌に対してマイナスに影響を及ぼすことになります。

 

 

6.夜尿を叱らない

 

 夜尿をしたという行為を叱る保護者がいますが、これは絶対にやってはいけません。夜尿症は無意識の行為であり、本人は夜中にお布団の中に排尿した事を何一つ覚えていません。意図的に悪い事をしているわけではないので叱る理由がないのです。子どもは就寝前になると反射的に『翌朝に叱られる情景』を思い浮かべ、さらに悪い緊張感が生じ、ストレスを与えることになり、自律神経による膀胱・尿道の機能調節低下や抗利尿ホルモンの分泌を妨げることになり、夜尿の増悪につながります。

 

7.焦らない

 

 夜尿症は非常に経過の長い病気です。薬を飲めば直ぐに治ると考えてはいけません。すぐ治ると勘違いして、なかなか治らないことで不信感がつのり、やがて離脱していくケースが時々あります。冒頭で述べたようにアンケート調査では途中離脱が13.6%もいました。原因を聞いたところ、なかなか治らないからと云うのがその理由でした。私のところでの平均治療期間は1年6ヶ月です。専門医である私のところで治療しても経過は長いのです。このことを初診の時に家族に説明して納得してもらう必要があります。結果を早く求めず、医師が指導したことをじっくり焦らず実行することが、治療の最短距離なのです。

 

 

8.寒さ対策をする(冬期対策)

 

 寒さは夜尿症にとって天敵のようなもの。いくら暖かい夏に良くなったと言っても、冬に増悪すれば治ったことにはなりません。冷えは身体の表面を走る毛細血管を収縮させます。体の表面を循環していた血液は身体の内部に移行し、腎臓を通過する血液量が増えます。腎臓を通過する血液量が増加すると尿量は必ず増えます。また冬は夏に比べて発汗量が極端に減少するため尿量はやはり増えるのです。また寒さは膀胱を小さくします。これは自律神経が関与しているのですが、寒くなると機能的膀胱容量が低下するからです。結局寒さで尿量は増加し膀胱は小さくなり、当然夜尿は悪化するので、寒い時期には『寒さ対策』が必要となります。

 

─ 寒さ対策 ─
1. 就寝前の長めの入浴
2. 毛布・掛け布団の工夫
3. 電気式毛布や電気カーペットの使用

 


 寒さ対策には色々な工夫があると思いますが、私のクリニックでは上記3項目を指導しています。就寝前に風呂に入り、じっくり身体を温めることが大事です。入浴剤を使用するのも良いでしょう。子どもはもともと寝相が悪く毛布や掛け布団を蹴飛ばして、いつの間にか身体がヒンヤリしていることが多いでしょう。これを防止するために毛布や布団がはね除けられない工夫をすべきです。例えば毛布や布団の四隅のボタンをつけ、敷き布団にボタン受けをつけて離れないようにします。電気敷き毛布を敷いてその上に大きな柔らかいビニールを敷いて下さい。さらにその上にシーツを敷くと良いでしょう。強さは弱にします。布団に入った時に温かいのを嫌がる子がいます。その時はタイマーを購入し、夜中にスイッチオンするようにセットすると良いでしょう。

 

 

 

9.おむつはしない

 

 小学校高学年になってもおむつをしている子が時々いますが、私は以下の理由から反対です。おむつをしていると万一失敗しても誰も困りませんから、患児本人に『がんばって治そう』という積極性が出て来ません。夜尿症の改善にはいい意味での緊張感が必要です。『絶対に治りたい。だから決められたことは絶対に守るんだ』という本人の強い希望と意欲が不可欠なのです。これはあくまで私の印象ですが、同じ夜尿状況でもおむつをしている子としていない子で治癒までの期間を比較してみると、おむつをしている子の方が圧倒的に長いのです。

 

(相川先生の夜尿症相談室 から)

 

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